このままここにいたら、いつか加奈子は死んでしまう。


直感的にそう思った。


でも今の俺には、親父や母親と戦って彼女を守る力なんてない。


じゃあどうする…?




ニゲナキャ


アイツラノテノトドカナイトオクヘ


オレガカナコヲマモルンダ…




それだけの気持ちで、加奈子を連れて家を飛び出した。


けれども当時俺は6歳、加奈子は3歳。


右も左もわからない俺達兄妹は、行く宛もなくさまよい歩いた。


どうしていいかわからないうちに夜が来て、


真っ暗闇の下で寒さに泣く加奈子の声で、近くの人に発見されて、俺達は警察に保護されたんだ。


でももちろんあんな家には帰れるわけもなく、俺達は施設に入ることになった。


けれども…


それからは幸せで。


殴られることもお腹をすかせることもなくて


明るい部屋で暮らして友達もできて、学校へも行って…。


親が本当の親でないということを除いては、本当に普通に育ってきたと思う。


…あの日までは。