「あのね加奈子、お兄ちゃんのことが世界で1番好き」
「バカなこと言うなよ」
「ほんとのことだもん」
ぎゅっと俺にくっつく加奈子は、俺よりも何も知らないくせにきらきらした目をしていて。
天真爛漫なやつだったよ。
だからこそ…。
「こんなに借金作ってどうする気?」
「はあ、うるせえんだよっ」
ガシャーンッ
母親の言葉にキレた親父が、棚を蹴り飛ばす。
「そうやって物に当たって、あたしにはあんたに渡すお金はもうないから!!」
「ふざけんじゃねーぞ!!」
怒鳴った親父は大きく拳を振り上げる。
「お兄ちゃん…怖い」
人一倍感受性も強い加奈子は、毎日毎日すごく怖がっていた。
震えて俺にしがみつく。
「見ちゃ…だめだ」
でも俺は…、涙に濡れた加奈子の目を塞ぐことで精一杯だった。
俺にできることなんか何もなかった。