藤堂君があたしの頭をポンポンと撫でた。
「別に俺は自分のことを不幸だとは思ってないよ。サッカーを辞めたからこそ俺はみんなに会えたんだし」
「うん…」
「でも…ね」
そう言って藤堂君はベンチを立った。
そして思い切り背伸びをした。
「俺はやっぱりサッカーが好きなんだなって思う」
太陽の光が小柄な藤堂君を照らす。
藤堂君が離したボールが地についてバウンドした。
それを脚で止めると藤堂君が振り返る。
「久々にわくわくしたよ。莉子ちゃんパス上手だったし」
「いやいや、全然」
「そんなことないよ。ボールを蹴ることがこんなに楽しいって思う日がくるなんて思わなかった」
藤堂君…。