俺を殴った奴らはバツが悪そうに俯くだけだった。


「監督に言いに行くか?」


仲間の一人がドアを開けようとするけど…


「でもこれ報告したら次の試合出れなくなるんじゃねえ?」


「確かに…」


今回の大会は県大会、そして全国大会につながる大事な大会だ。


多分これを逃せば俺達のサッカー人生は大きく変わるだろう。


皆無言のまましばらく考え込んでいた。


そのうちに一人が口を開いた。


「藤堂には悪いけど、隠せばいいんじゃねえの?」


…え?


俺は自分の耳を疑ってしまった。


「藤堂が勝手に階段とかから落ちて怪我したことにしとけば、試合にはきっと影響は出ないだろ」


「…っ!!」


叫びたいのに言葉が出ない。