「これ、ちょっと可愛くない?
指輪みたいで」
朝の陽射しの中で
左手の中指と薬指の間に挟んだ花を指輪に見立て
愛しげに見つめて微笑む香子に
俺は一瞬見惚れてしまった。
「ああ そうだな」
年甲斐も無く
可愛いことしやがって・・・
俺よりもたった5年
早く生まれただけなくせして
やけに偉そうに
「おねーさん」風を吹かせる時の
すました様子とは大違いだ。
「とっても綺麗」
「そりゃそうだろ?
生きてるモンだからな」
お前も・・・
お前もだ、香子
ダイヤよりも プラチナよりも
物言わぬ花よりも
泣いたり笑ったり
生き生きと輝くお前が
何より綺麗だ。
花を挟んだままの
香子の左手に恭しくくちづけると
少し照れた風に笑った彼女の
細い首に手を回しそっと引き寄せ
ゆっくりと唇を合わせた。
fin