その超絶美少年は、「椰城祈璃」と名乗った。
なににも興味を持ってないような半開きのその瞳を私に向けて
「キミは?」
独特の空気をまとって。
その空気に惹かれるように、私も無意識に自分の名前を口にする。
すると、祈璃くんは口元をうっすらと微笑みに変え、
「よろしく、亜生」
そう言った。
窓から差し込む夕日が祈璃くんの顔を紅く照らす。
夕日に照らされた祈璃くんは、これでもかってくらいキレイで、可愛くて。
「祈璃くん…」
なんて美しいんだろう。
羨ましいくらいに夕日が映える。
そして私はついつい、禁断の一言を口走ってしまった。
だって、知らなかったんだもん。
無意識だったんだもん。
それを言ったら何が起こるかなんて、想像もしてなかったから
だから、私はなんの悪気もなく、ただただ本当に純粋に思ったことを口にした。
「可愛いね」
……
「…」
「…?」
……
「はぁ?」
その瞬間、祈璃くんが纏っていた空気が一瞬にして凍った。
「?!?!?!」
えぇ?!
なんか祈璃くん超怒ってる?!
祈璃くんの顔から笑みが消え、私を睨む。
あ…でも睨んでも可愛い…
って、いやいやいや!
そんなこと考えてるばあいじゃないよ!
いや、可愛いのはホントだけど!
うわぁぁぁ!!!
なんか祈璃くんこっち来たぁぁぁ!!!
完全に笑みを消した祈璃くんが、ズンズンとこっちへ歩いてくる。
なんでなんで?!
私そんな怒らせることした?!
パニックに陥る私だけど、祈璃くんは構わず歩を進める。
ぎゃぁぁぁ!!
何?!殴られる?!
私はとっさに身構える。
祈璃くんは、もう近くまで来てる。
―――ズンズンズン。
迷わず私を睨みつけたまま。
そして祈璃くんは、私のすぐ目の前まできて足を止めた。
上目遣いで私を睨む。
そして、大きな声で叫んだのだった。
「可愛いとか言うなっ! 僕は可愛くなんかない!」
…
結局、可愛かった。
本人は、プンプンと頬を膨らませている。
それがまた、めちゃくちゃ可愛かった。
祈璃くんは、無自覚に可愛い、無気力天然美少年だった。
ホント、女子の敵です。