* * * * *
そして、廊下で一人、ため息をついていた私につながる、と。
「はぁぁ~…」
なんでこんなことに…
結局私は、反論の余地もないまま男子寮に住むことが決まってしまった。
住むとこないから仕方ないとは思うけどさ、
どうしてよりにもよって男子寮かなぁ…
行き場のない複雑な気持ちを抱え、私は重い足取りで寮への道へとついた。
…まぁ…
決まっちゃったこといつまでも考えてても仕方ないかなぁ…。
あんまりため息ついても幸せ逃げるだけだし。
「…よし…!」
こうなったら開き直ってやる!
そうだよ!
男子寮に住むなんて、普通の女子じゃ体験できないじゃん?!
せっかくだし楽しんでいかなきゃ!
「よ~し! このまま寮までダッシュしてやるっ!」
無理矢理気持ちを奮い立たせ、私は走り出す。
けど…
「わ」
「ぅひゃあ?!」
―――――ドンッ!
走り出して早速、私は誰かにぶつかってしまった。
早々に誰かに迷惑かけるなんて…なにしてんだ私…。
ぶつかった相手は感情のこもらない声を発し、私たちは同時にしりもちをつく。
「いったぁ…」
「……」
私は、うんざりとしながら体を起こす。
なんでこうドジっちゃうかなーもー!
自分が嫌になります…
相手も、無言で体を起こした。
「あ… ご、ごめんなさいっ!」
私は慌ててその人に駆け寄る。
「ううん。 平気」
手を差し伸べたけど、やんわりをそれを断り、細い足を立たせる。
そして、その人は顔を上げた。
「……」
息を呑む可愛さだった。
小さい顔に並ぶ、整ったパーツたち。
目は私なんかより全然大きくて、まつげもめちゃくちゃ長い。
手足も細くて、腰なんかもう折れちゃいそう。
そこらの女子とは比べ物になんない可愛さ。
でも、あれ?
その子の首から下に目をやり、私はあることに気づいてしまった。
その超絶美少女は
「なに。 なに見てんの」
「……」
「僕になにかついてる?」
男の制服を着ていて。
「ねぇ、聞いてんの?」
まるで女の子みたいな、
超絶美少年様だった。
「キミ…僕が見えてる…?」
超絶美少年様は、怪訝な顔をして私の顔を覗き込む。
見えてる。 見えてるよ。
よく見えるよ。
女の私よりも全然可愛らしい、羨ましすぎるその姿。