* * * * *
「…はぁぁー…」
誰もいなくなり、薄暗くなってきた夕暮れの廊下に響く私のため息。
ため息のとおり、私のテンションは最下層。
とぼとぼと一人長い廊下を歩いているところです。
それもそもはず。
…つい5分前の話です…。
「華嵩先生! 私は女子です!!!」
私は勢いにまかせ、大声で叫びながら職員室へと駆け込んだ。
理由はもちろん、寮のこと。
「えぇ?! ごめん知ってた!!! 急にどうしたの?!」
驚いた様子で先生も大声を上げ、私たちは向かい合う。
うんそうだよね。
私は女子だよね。
先生知ってるよね。
「だったらこれはなんですかぁ!」
「へぇ?!」
私は寮の地図を先生の目の前に突き出した。
いきなりのことで思考が追いついていないらしい先生が、素っ頓狂な声をあげる。
「いいから見て下さいっ!」
そんな先生に構わず、私は先生のおでこに紙をおしつけた。
「なになにぃ? 先生怖がりなんだからいじめないでよぉ」
先生は、軽口をたたきながら私の押し付けた紙に目をとおす。
「……」
そしてその顔が、だんだんと真っ青に染まっていった。
さっきまでだらしなく開いていた口が、不安そうにゆがむ。
そして、一言。
「……… …てへっ」