「それじゃぁ、気をとりなおしてっ!」
そして響く、華嵩先生の元気を取り戻した声。
「これから、寮の説明をするよっ!」
そう。
ここ、聖奏学園は全寮制。
私はこの寮生活が、この学園のもう一つの楽しみだった。
家を離れて寮生活とか夢だった!
華嵩先生の説明が続く。
「校内には、男子寮、女子寮ってそれぞれ別にあるから、間違えないようにね! それと、男子は女子寮に立ち入り禁止っ! 女子も同じくね! 忍び込んだりしたら…」
華嵩先生の声のトーンが落ちる。
「…下手すると… 退学だよぉ♪」
なぜか「退学」の部分を超元気に言う華嵩先生。
「恋愛とかは自由だけど、ルールは守ろうねっ♪」
小さな子供に言うように華嵩先生はみんなに言い聞かせた。
そして、華嵩先生は寮の地図を配り始める。
「はいっ! これで自分の部屋ちゃんと確認しておこうね~♪」
私の手にも地図が配られる。
「自分の部屋確認できたら各自、寮に帰っちゃっていいからね~♪」
華嵩先生の声がする。
じゃあ私もさっさと寮に向かおう!
そう思い、ぱぱっとその地図に目を落とし、寮内の確認。
寮はかなりの広さで、個別の部屋のほかに共同の大きなお風呂や談話室、食堂、売店などの設備もそろっていた。
個別の部屋も結構な広さで、リビング、寝室、私室、和室、大きめのクローゼットなど部屋数も多く、シャワールームやミニキッチンも完備されてる。
なんだろうこのすごさは…。
寮のレベルを超えている。
こんな寮に住めるなんて嬉しすぎるよ!
さてと、私の部屋はどこかな~♪
私は、地図の端に目を向ける。
地図の端に名簿のようなものが書いてあり、そこに自分の名前と寮の部屋番号が書いてあるはず。
テンションが上がってルンルン気分で名簿に目を走らせる。
「え~と…」
名簿の名前を全部見る。
「…あれ?」
そこで、私にひとつの疑問が浮かんだ。
もう一度、名簿を見る。
「美風さん、部屋、見つかりました?」
隣から、玖澄さんの声。
その声に答え、私は言った。
「ない」
「はい?」
玖澄さんが、不思議そうな声で聞き返す。
「ない」
私は、もう一度言った。
なぜか、私の名前が名簿になかった。
…あれ?
なんで?