* * * * *
「あの~… そろそろいいかなぁ」
玖澄さんの私いじめが終わって、やっと私の顔の熱さが引いてきた頃…
華嵩先生の気を使ったような控えめな声が聞こえた。
「…?」
机に突っ伏していた顔を上げる。
「「「……」」」
「…!!」
クラスの全員…先生含め、約30人。
その全員が、私と玖澄さんを見ていた。
ある人は私と同じく、顔を赤く染め
ある人は恨めしそうにすごい形相で私を睨み
ある人は世界の終わりのような顔をして滝のように涙を流し
またある人は驚きのあまりあごが外れている。
やってしまったと、思った。
忘れてた。
ここ教室じゃん。
なにしてんの自分…?
また私の顔に赤みが戻る。
「えっとぉ… 大丈夫?」
あの華嵩先生が、私を心配している。
「…亜生…」
あの侑宇でさえ、なんともいえない顔で私を見ている。
穴があったら入りたい…
いっそ掘ってでも入りたい…!!!
「…す…すいません……///」
なにも言えず、ただ顔を伏せて謝罪する。
お前のせいだぁ!!
そんな気持ちを込めて隣を見ると、玖澄さんはなにごともなかったような涼しい顔で、ただ静かに座っていた。
…いったいなんなのよこの人は…
なんでそんな爽やかな顔してられんだ?!
玖澄さんは、私の視線に気づき、私ににっこりと微笑みかける。
あぁ…
この人には勝てないな…。
冷静にそう思う。
この人を敵に回すことだけは絶対にしないようにしよう。
私はそう、心に決めた。