「…え… 玖澄さん、ですか?」
あのアイドルのような人気の、女子が自分を見失うほどイケメンの、新入生代表で超秀才の、
あの、玖澄朔夜さんが、
なんとおこがましいことか、
私の隣の席で、
こんな私に、
爽やかな笑顔を投げかけてくれていた。
あの人は超絶人気すぎて実は幻だったんじゃないかと薄々感じていたんだけど…
どうやら、私の隣で微笑むこの人は現実のようで。
ついでに言うと、そんな私に「なに朔夜くんに話しかけてもらっちゃってんのよこのおブスが」…と鋭い眼光を放っている女子の怖すぎるオーラも現実のもので…。
私はとりあえず、戸惑った。
「えっと、美風さん、ですよね? …大丈夫ですか?」
そんな少々気持ち悪い私にも関わらず、分け隔てなく接してくれる優しい紳士な玖澄さん。
「だっだ、だいじょ、ぶです」
そして、そんな玖澄さんにもこんな変な態度しかとれない私…///
いつ見ても完璧な爽やかスマイルな玖澄さんの隣にいるのが恥ずかしい…///
「えっと… 新入生代表だったよね。 …すごい人気なんだね~…」
薄笑いを浮かべつつとりあえず話題をふってみる。
すると玖澄さんは、すまなそうに眉を寄せた。
「講堂では、申し訳ありませんでした。みなさんに迷惑をかけてしまいましたよね」
あぁ、そのこと。
まぁ、たしかに迷惑じゃなかったって言えば嘘になるけど…
「全然気にしてないよ。むしろ、嫌な顔ひとつしないで相手してた玖澄さんに感心しちゃった」
玖澄さんも大変だったんだろう。
何回か前に進もうとして女子に阻まれてるの見てたし…。
優しい紳士は苦労するなぁ。
すると玖澄さんは、なんだかさっきとは違ううっとりとした目で私を見てきた。
「あなたは…優しい方ですね」
…ぇ、 な、に…?
その目はなに?!
甘い甘い、まるで恋人にでも向けるような…
って! なに考えてんの私っ!!!
玖澄さんのその甘い目に、私の顔が熱くなる。
「そ、そんなことないよっ!! 玖澄さんの方がよっぽど!!」
慌てて顔の前で手を振り、照れ隠しのようなものをする。
でも、次はなんだか意地悪な笑みを浮かべた玖澄さんが、私の顔をもっと赤く、熱くさせた。