「さっき、俺にお礼言ったよな」
「へ? あぁ、うん」
いきなりの発言に、多少戸惑いながら返事を返す。
すると杜神くんは、ますます表情を曇らせて、怒られている子供のように寂しそうに言った。
「でも、俺、お礼言われることできなかった」
「…?」
よく、意味がわからない。
どうして「できなかった」なんて言うの?
杜神くんの言葉が理解できず、私はただ黙って次の言葉を待った。
少しずつ、ゆっくり、杜神くんは話してくれた。
「俺は、怖がらせることしかできない」
…うん。
「ホントは、役に立ちたいなって思ってんのに」
うん。
「でも、俺にはあれ以外できない。 わからないんだ…」
うん。
「なんで、俺にはできないんだろーな…」
「……」
そして、寂しそうに笑った。
俯いたまま、こぶしを固く握って、すごくつらそうに…
* * * * *