* * * * *



「…見つけた…!」


杜神くんを探し回って数分。


慣れない広い校舎で右も左もわからないままがむしゃらに探し続けていると、やっと大きな木の下で座り込む杜神くんの姿を見つけた。



「杜神くん…!」


大きな声で呼び、駆け寄る。


「…?!」


呼ばれた杜神くんは、びくりと体を強張らせ、ゆっくりと振り向いた。



「…? 誰だ」



そのまま私を数秒見つめ、眉間にしわを寄せる。



まるで、敵を威嚇する獣のように。



私は、ゆっくりと杜神くんに近づき、静かに隣に腰を降ろした。


「…」


少し距離をとる杜神くん。


人におびえた動物のようなその態度に、私はまた心が苦しくなった。




誰がこの人をここまで追い詰めちゃったのかな。

すごく、悲しいな。



私は、杜神くんを見つめ、口を開いた。



「私は、美風亜生だよ」


なるべく穏やかな口調を意識して、自己紹介をする。



それから、さっきの講堂でのこと。


「さっきはありがとうね。 杜神くんのおかげで、みんな講堂出れたよ」


「……」



あれ…?

お礼を言ったつもりだったんだけど…


「杜神くん…?」


なぜか、杜神くんの表情が曇ってしまう。


な、なにか気にさわったかな?!



杜神くんは目を伏せ、一点を見つめたまま黙ってしまった。


元気づけたい…とまでは言わなくても、なにか役に立てたらと思って来たのに…



私も何も言えなくなり、二人して黙り込んでしまう。




そのまま、無言の時がただただ流れていってしまった。




………

そして、数分が経ってしまう。



…いい加減、なにか喋ったほうがいいかも…?


このまま黙っててもなんのために来たのかわかんないよね…!



ついに私は痺れを切らした。


えっと…

何を言えばいいんだろう。



なにかしら言わなくては…と考えをめぐらせる私。


そんな私に、なんと、杜神くんがゆっくり口を開いた。