優のマンションの前の最後の角を曲がった時……



マンションの目の前に1人の男の人が立っていた。



遠くからだから明確には見えないけど



あの背丈と姿は優に違いない。



一歩一歩進んでいくと少しずつ優の表情が見えてきた。



「杏、おかえり」



「え……」



おかえり?優から聞いたことのない言葉であたしは思わず口をぽかんとしてしまった。



すると、優はいつもの悪戯な笑みを浮かべてこう言った。



「だって今日から一緒に暮らすんだからおかえりでしょ?荷物貸して」



とあたしの有無を聞かずにボストンバッグを掴むと、空いた手を握ってあたしたちは優の部屋に向かった。