「いいじゃん、別に!義理チョコくらい!



心が狭い男だな」



にこっと笑いながら嫌味をぶつけてくる兄貴。



分かっているんだったら来るなよと思いながら俺は玄関に兄貴を追い出した。



「兄貴は璃子さんのだけで充分だろ。とにかく杏の作ったチョコレートは絶対にあげないから」



「……はいはい。本当に優は杏ちゃんにゾッコンなんだから。



俺は杏ちゃんに抱き締めてもらっちゃったし、今年のバレンタインはそれで我慢するよ。



じゃあ杏ちゃんの看病ちゃんとしろよ。じゃあな!」



と手をヒラヒラ振り兄貴は帰って行った。



「はぁ……ったく」



母さんに合鍵を兄貴に渡さないように言って置かないと。



練習で疲れてるのに余計に疲れがアイツのせいで溜まったし。