彼女の言葉に、秋さんは勢いよく振り返る。

「ええ!?アンタってば…、彼の妹だったの…!?」

 かなりショックを受けたようで、秋さんはふらふらと数歩後ずさりをしていた。

彼女もそのリアクションに目を見開いて驚いている。


「もしかして、あんたの好きな人ってお兄ちゃん!?」

 お互い驚いているようで、口をパクパクさせながら顔を見合わせていた。

だが、肝心なことを二人とも忘れている。


「ちょっと落ち着けって!」

 仲裁に入ろうと大きな声を出すと、ビクンと二人は肩を震わせる。

そろりそろりと向けられる二人の視線に、呆れながらも続けた。

「大体なぁ…っ」

 話している途中だというのに、ポンと肩を叩かれる。

次から次へと邪魔が入り、苛立ちながら振り向くとそこには…


「葵さん、何してるんですか?」


 匠さんがいかにもビジネスモードで立っていた。

その後ろには匠さんと一緒に会社を出てて来たもう一人の男性が、呆然とこちらを見ている。


 まっさきに、スカートの裾をヒラリとさせて飛びついたのは彼女だ。

「お兄ちゃんっ」

 嬉しそうに腰に腕を回す姿は、出逢ったときとなんら変わっていないようだ。

ブラコンの中のブラコン魂は健在していた。


「あれ、遥姫?そんな格好で…、もしや葵さんとデート?」

 匠さんがからかいながら、彼女の頭を優しく撫でながら笑っている。

だけど彼女はあしらうわけでもなく、急にむすっと不機嫌そうな顔に変わった。


「んなワケないでしょ!?」

 ムキになって否定する彼女に、若干オレも頭にきたのはこっそりしまう。


 なんていったって、オレはオトナだからな。