「なんだか複雑そうねぇ」

 オレの心情を察してくれたのか、ママさんは困ったように頬に手を当てていた。

少しでも気持ちを理解してくれる人がいたことに、なぜか安心してしまう。


「ええ、全くです……」

 ため息を一つついて、ようやく隣にいる不機嫌なお姫様に目をやる。


「…ところで、お前なんでここにいるんだよ」

 面白くなさそうに口を尖らせる彼女をみてると、本当にヒヤヒヤしてしまう自分に気づく。


 いくら高校生でも、こういった水商売はよくない。

こんな姿を誰かに見られる前にオレが見つけておけてよかった、と心底思った。


ぶすっと黙ったままの当の本人は、オレの切実な心中なんてちっともわかってくれているようには見えない。

「おい、なんとか…っ」

 一向に口を開かない彼女にハッと気づいた。


 もしや、ヤキモチ……?

いつもなら彼女が暴走するところ、今日という日は秋さんに振り回されっぱなしだ。


 意外と可愛いとこもあるんだな、なんて顔が自然と緩んでしまっていた。


「ちょっと!勘違いしないでくれる!?」

 一気に現実に引き戻すかのようにバシンと痛い音を立てて叩かれる。

オレの考えが顔に出てしまっていたのだろうか、いつもの強気な瞳を刺してくる。

観念したように、彼女はきゅっと下唇を噛んだ。