予想外の音量にオレの肩はビクンとはねてしまい、おそるおそる音源の秋さんに視線をずらす。


「そういえば、アタシのお願い、言ってなかったよね!」

 楽しそうにソファにちょこんと座る。


「…そ、そう…ですね…」

 秋さんはそれすらも見越していたのか、話し始めることなくずっと微笑んだままオレを見つめている。


 要するに隣に来い、ということか。


 重い腰を上げて、視線は粘り強く画面を見ていたが、結局オトメくんから返信がくることはなかった。




 一応、ココはオフィスだ。

こんなオレだから説得力に欠けるかもしれないが、それなりのケジメを持って仕事をしている。



 ……つもりだ。

だから秋さんの正面に座ったんだ。

しかしその刹那、今までに見たことがない般若の顔つきをするもんだから、慌てて隣に回った。


 それでもなるべく距離をとったほうだ。


「あのね、葵ちゃん……」

 上目遣いで、同じソファなのにじりじりとまた詰め寄ってくる。

 膝と膝がコツンとあたり、そのままオレの手がそっと白い両手で包まれた。


「あ、あああ、秋さん…?」

 オレが身の危険を感じた頃だ。