しかし、何秒目を瞑っても
痛みを感じる事はなかった。
ゆっくり、目を開けると
私の目の前には、
「……あ…おぃ…。」
山洞さんが弱々しく呟いた。
私の目の前には蒼がいた。
山洞さんの腕を蒼が掴んでいた。
「なにやってんの…?」
蒼がいつもより低い声で
言い放った。
「いっや…あのぉ…」
「お前、紫苑になにしてんだよ。」
さっきよりも、低い声で
蒼は言った。
「だって……」
「紫苑になにしてんだよって言ってんだよ!」
蒼が怒鳴った。
「…蒼忘れちゃったの…?お姉ちゃんの事…。グスッ」
「忘れてねぇよ…。海風との事は過去にして、俺は前に進んだんだ…。」
「そんな事私が許さない!お姉ちゃん死んじゃったから、蒼の彼女は私しかいないじゃん!他の子と付き合うなんて絶対に認めないから!!」
そう言って、山洞さんは去っていった。