「もう、びしょびしょじゃない…」
「でも楽しかったじゃないですか~」
「…。…むしろ疲れた」
「えー」
光輝君にはそういったものの、けっこう楽しかったのは事実だった。
濡れた服を乾かすため、二人で岩場に腰をおろし、少しずつ赤みを帯びる空を見上げた。
風が少し寒いが、まあいい。
ふと隣を見れば、光輝君は学ランを脱いで、ワイシャツ姿になっていた。
張り付いたシャツで、普段は見えない体のラインがはっきりする。やっぱり男の子の割に、華奢に見える。
「光輝君は細いね」
「めーちゃん人のこと言えないですよ。すごい細身じゃないですか」
「いや。私は元々胃下垂なの」
「食べても太らないやつだ、いいですね」
「…まあ、あながち間違ってない…」
「へへ」
光輝少年は笑う。
湿った猫っ毛は大人しい。
なんとたんく手を伸ばして、その髪を撫でた。
「?なんですか?」
「や。濡れてても柔らかいものかって」
「えーどうでしょう。でも、めーちゃんの髪の方は綺麗でさらさらですね」
言いながら光輝君の手が、私の髪を撫でる。
伝わる手の感触に、少しだけ体が震えたような気がした。
「それはどうも」
まあ、気のせいだろう。