「そ。大体の事情はわかった。それで、どうするの?私、午後も講義あるんだけど」


「放置してもらって大丈夫ですよー。ちょっと早めの抜き打ちオープンキャンパスします。終わったら、迎えに来てください」


「…別にいいけど」


「じゃあ」



言いながら、光輝少年は懐に手を突っ込む。

何をするかと思いきや、再び外に出てきた光輝君の手には、携帯電話が握られていた。



「めーちゃんの連絡先、教えてください」


「…ああ」


そういえば、教えてなかった。


私も携帯電話を取り出す。

赤外線通信を開いて、光輝君の携帯と向け合う。


光輝君の携帯は、黒の無機質な携帯電話だった。
傷一つない、新品のような。
それがなぜか、引っかかった。
だって、高校生というと、携帯を手放せない携帯依存な印象が強い。女子は特にそうで、光輝君は男の子だからそれほどでないかもしれないけど、でも高校生というと携帯を使いこんでいるに違いないはず。


なのに、それは冷たすぎる光沢に身を包んでいた。










「めーちゃんの連絡先げっと★」





光輝君の嬉しそうな声と、ぱちんと携帯電話が折りたたまれる音にはっとなった。


光輝君は嬉しそうに笑いながら、携帯電話をしまう。



「ねぇ――」






光輝君、一緒にどこか行こうか。









気づいたら、そう言っていた。