「何しに来たの、光輝君?」


校舎裏、人通り皆無の地点にて。



なんとか息を整え、きょろきょろと大学というものを観察している様子な光輝少年に問いかける。


すると、光輝君はこちらに笑顔を向ける。



「めーちゃん会いに来たの」
「……」



……言葉が出ない。



「……は?」


「だから、めーちゃんに会いに来たんです。部屋に一人、てすごくさびしいんです」


「…だからきたと?」


「うん。めーちゃんすぐそこの大学の三年生、て言ってたからすぐ場所わかったし」



あれ、この子案外頭いいの?


どうやら認識違いがあるようだ。



「…てか、りりについていけばよかったじゃない」


「りりーさん、彼氏さんとこに行ったんです。連絡とって、話し合いに。僕が行ったら、またこじれちゃうかな、て」


すこし目を伏せて、さびしげに光輝君は言う。



…賢明な判断だ。


思ったより、常識はあるらしい。

ていうより、常識をちゃんとわかってて外れることをするタイプかも、しれない。




その理由は、もしかして――








思わず考えそうになって、そこでやめた。


やめないと、いけない気がした。