屋上
私は授業を抜け出してよくここに来る。
先生に「保健室に行ってきます」と言えば、理由もなく授業から開放されるこの体質はほんの少しだけ気に入っている。
私は屋上で眠るのが好きだ。
誰もいない屋上に来て眠ると、世界に一人残されたかのような感覚に陥って。
(たまんない)
自分でも自分がおかしいのではないかと思う。
それでも、
「それでも、やめられない」
「何が?」
「…!?」
「そんなに驚くほどだったか?」
おどろいた。自分以外のひとがここに来るなんて…
と、とりあえず
「…今、授業中ですよ」
「知ってる」
「サボりはいけません」
「キミもじゃないか」
「…わ、わたしは先生に言ってきました」
「なんて?」
「うぅ…」
このひと…意地悪だ…
「ぷっ」
…え?
「おまえ面白いな、名前は?」
「…あなたみたいな不審で、失礼で、授業をサボってる不良には言いません」
「傷つくな」
それに
「相手の名前を聞きたいときは、自分から名乗ってください」
「正論だな。よし俺の名前を教えてやろう。」
「何で上から目線…」
「まぁまぁ、俺は夢未 郁(ゆめみ いく)って言うんだ」
「そうですか、わたしは…」
「わた、しは…」
あぁ、またこの海に沈む。
わたしは、おぼれる。

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「やっと出会えた」
次は間違えたくない。
「また世界を繰り返すよ」
次は幸せになりたい
「僕は、キミのハッピーエンドだけが見たい」
次は…

次こそは…

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「あ、起きた」
「…あの、寝ちゃってましたか?」
「寝ちゃってました」
「だけどそのおかげでお前の名前わかった」
「え?」
「お前、海凪未来(うみなぎ みく)だろ」
「な、なんでですか?」
「だって、有名だから、2-Cの眠り姫って」
ね、ねむりひめ…
「これから俺もここ来る」
「へ?」
「仲良くしろよ、姫さん」