僕は泣いていた。
なぜ泣いているのかはもうわからなくなっていた。
この、何かがおかしい世界で、
僕と君は、一緒におぼれていた。
なのに、
「…どうして君がいないの?」
いや、違う。
「どうして君だけがいないの?」
きずいたら、この世界におぼれている人間は、僕だけで。
君の着ていた服だけが、この世界に浮かんでいた。
「どこで間違ったんだろう」
そのつぶやきは世界という名の海に吸い込まれた。

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「…ぇ、ねぇ!未来(みく)」
親友の麻奈(まな)が声をかけてきた。
「あー!びっくりしたー。未来、あいかわらずいつ、どんなときでも眠るねぇ」
「…うん、ごめんね。どんな話してたっけ?」
「もう!謝んなくていいの!未来のことはよーく知ってるつもりだし、それに…」
「それに?」
「その、し、親友…だと、思ってる、から」
「あー!わらったなー!もう!本気なのにー」
「うん。わかってるよ私も大好きだもん」
「…もう、未来、かわいすぎてはげそう!」
「は、はげ、」
あれ、なんだわたし、すごい幸せじゃん。
さっきの夢はなんだったんだろう。
あの「キミ」って誰だったんだろう?
だけど、まぁ、今だけは、
せめて今だけは、この幸せをかみ締めて生きていこう

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「…現実の僕は、キミに気づけないのかな?」
「早く、眠りに落ちてくれないかなぁ」
「…キミは気づいてほしいの?」
「もちろん、気づいてほしいに決まってる」
それなら…
「まだ間違えを、正解にすることができる…」
「え、」
「まだ間に合うよ、早く、行こう」
間違えをなおしに行くんだ。
「どこに行くんだ?」
決まっている
「キミと僕が出会った場所に、だよ」


世界がまた広がった気がした。