“ドーン”

私の足に何かがあたった。
私が何かを蹴飛ばしたのだろう…。

不思議に思って前を見ると…

「人??」

そこには、地面に座っている男の人がいた。

この道には誰もいなくて、私と男の人だけの静かな空間。

私に蹴られた男の人は、ゆっくりと顔を上げた。

そして、私と目があった。

それが、私と君の出会い…。

私と君の始まりだった。


「すいません…」

蹴ってしまったことを素直に謝り、その場を立ち去ろうとした私。

「ねぇ…待ってよ」

そんな私を引き止めた君。

「えっ?」

「君、顔腫れてるよ?」

ふと思い出す今の私の状況。

今日も、散々凌に殴られて私の顔は大変な事になっていたのだろう。

「大丈夫?」

…大丈夫?

私は、初めて人から心配してもらった。

友達も親も、私のことなんて気付かなかったのに…。

この人は、初対面の私の変化に
気付いてくれた。

私の傷ついた心を心配してくれた。

彼はその言葉に深い意味を込めていなかったかもしれない。