そんな琉志先輩の後を黙ってついていく私。

3分ほど歩いて着いたのは、体育館の中にある誰もいないサッカー部の部室だった。

狭い部屋に二人っきり。

シーンとした部屋で琉志先輩が、私に背を向けながら

「さっきのが例の元カノ」

そう呟いた。

やっぱり…私の勘は当たってた。

琉志先輩の悲しそうな顔…。

それは、大好きな人を見る顔。

「俺の元カノさ…浮気してたんだ。」

えっ?

「琉志先輩という彼氏がいるのにですか?」

こんなに格好良くて、性格もいいって噂の琉志先輩が彼氏だったら、私は絶対浮気しない。

というか、普通の女の子だったらしないはずなのに…。

「優(ユウ)はさ…俺の顔しか見てなかったんだよ」

元カノ…優さんって言うんだ。

「優は、周りからの目を気にして俺と付き合って…でも、俺がつまらない男だったって分かって浮気した。」

つまらない男?

「先輩ってつまらないんですか?」

言ったあとに後悔する…。

こんなことは本人に聞くことじゃないのに。

すると、琉志先輩は意外にも笑ってた。

部室の中にあるベンチに座った琉志先輩は、突っ立ている私を見上げて

「何か…スリルがないんだってさ」

そう言ってまた悲しそうに笑った。

元カノの事を想って悲しんでいるのに
その姿を見て、私はドキッとしてしまった…。

「スリル…?」

そのドキドキを隠すように私は、先輩の隣に腰掛けた。

先輩に顔が見られないように。