「ああ…ありがとね」
やっぱり格好良いな…。
王子様スマイルで、周りの女の子は一気にイチコロ。
麻也も隣で目をハートにしているよ…。
琉志先輩は私に視線を向けて
「ちょっといいかな」
そう言って私の腕を引っ張った。
「あっ…栄菜~!何で?ずる~い!!」
遠くから麻也の声が聞こえるけど、それに返事が出来ない。
だって、今この状況に私が一番驚いてるんだもん。
琉志先輩との出来事が夢だったんだ…。
そう思い始めてた頃だったから。
でも、やっぱりあれは、夢じゃなかったんだ。
琉志先輩に引っ張られながら廊下を歩いていると、ものすごく視線が痛い。
ギャルの先輩方…
優等生の先輩方…
かわいい先輩方…
みんなから睨まれるよ…。
琉志先輩はそれだけ人気者なんだ。
そんな人の彼女に私はなるかもしれない…。
いや、それは絶対ないよ!
だって、まず凌を倒せるわけない。
しかも、あの時の琉志先輩はかなり落ち込んでた。
ポロっと想ってもないことを言ったのかもしれないし。
頭の中でいろいろ考えていると琉志先輩が急に止まった。
琉志先輩の目の前には。
可愛い女の人と、その人と仲良さそうに話す男の人。
見たことない顔だから、先輩なのだろう。
琉志先輩に視線を移すと琉志先輩は悲しそうな顔でその二人を見ていた。
あっ…あの時の夜と同じ顔だ。
もしかして…。
私の視線に気付いたのか、琉志先輩は私を見下ろして優しく笑いまた歩き出した。
何も言わない琉志先輩。