「栄菜(エナ)~買い物行く?」

学校が終わり、みんなだらだら帰る支度を始めてた。

「ああ~ゴメン。パス!」
「了解~!」

誰よりも早く教室をでて、猛ダッシュ。

いいな~みんなカラオケか。
私だって、本当は行きたいけどさ。

みんなと、買い物したりファミレスでお喋りしたり…。
高校生になってしたいことがいっぱいあるのに。

私には放課後、時間がないんだ。
自由な時間がない。

私が通う凪沢(ナギサワ)高校の少し離れたところにあるカラオケの駐車場。

そこに止まっている一台の大きな赤いバイク。

バイクに跨って煙草を吸っている男の人。

「ゴメン。遅くなった」

「てめぇ~。俺を待たせてんじゃねえよ。」

そう言って私の頬を思いっきり殴る男。

そう、これが私の彼氏。

「ごめんなさい。」

どんなに私が悪くなくても謝る。
そうすれば、あいつの怒りは少しおさまるから。

「早く乗れ」

ヘルメットを私に投げつける。
私のお腹に直撃したけど、そんなの見て見ぬふり。

何で、こんな人と別れないのだろう。
そんなの簡単だ。

別れないんじゃない。

別れられないんだ。