「加奈・・・?」
ふと呼ばれたのは、苗字じゃなくて名前・・・。
下の名前で呼ぶ奴は、家の中にすら・・・いないときだってあるのに・・・。
ぼーっとする頭でほとんど何も考えずに振り向いた。
『だ・・・れ?』
そこにいたのは・・・
「加奈。俺だよ。」
そういって笑ったのは
『ゆ・・・う・・・。』
葉桜悠馬【はざくらゆうま】
あたしの・・・あの事件を知らない・・・あたしの・・・幼馴染だった。
「元気してたか?」
久しぶりに会えたユウっていうのもあったと思う。
だけど・・・。
『ユウ・・・。ユウっっ!』
ーぎゅっ
誰とも話さない。
一人ぼっちでの教室。
家にだって居場所を感じられない。
全て・・・全てあの事件で失った。
家族からの愛情。
友達からの信頼。
先生からの信頼。
みんなからの・・・目があんなに怖くなった。
名前すら呼ばれなくなった。
あたしを見れば震えておびえる・・・そんなみんなの目が・・・怖かった。