「ねえ、愛情ってなんだと思う?」
「は?」
「愛情だよ、愛情」
指先でくるくるとシャーペンを回してみる。
ちらり、と窓から見えるオレンジ色に染まった校庭を一瞥してから視線を今し方自分から問い掛けた相手に戻す。
その相手は「なにが」退屈そうだった顔をさらに面倒臭がるように歪めて言った。
「辞書引けよ。俺に聞くな」
「引いたよ。【人や物に注ぐ温かな気持ち】だって」
「わかってるなら聞くなよ」
くるり、くるり。
シャーペンはまだ落ちない。
「はやく終わらせれば」
「蓮さっきから見てるだけじゃん。あたしの変わり決めてよ」