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「ダハハハ!!マジで!?それマジで言ってんの!?」
「マージだって!うざいよなぁ、センセーはおもんねー授業だけやっとけっての」
「ほんと死ねよ安達」


もう授業が始まる間際だというのに、俺の周りはうるさかった。

数ヶ月前にクラス編成された二年二組は、騒がしいヤツらの集まりだ。

もちろん中には大人しい生徒や、授業前にはしっかり準備をして待つ、なんて生徒もいたが、他のクラスよりは圧倒的に、前者の割合が多い。

ガンッ!と机に衝撃が走って、眉間にシワが寄る。

どうやらふざけあいの延長の中で、高嶋の尻が俺の机にぶつかったらしい。

ノートや筆記用具やらは全部、尻タックルのせいで見事なまでに床に散らばった。


「…おい」
「わりっ、朝海っ!すまんっ!!」


謝罪が連なっているわりに、羽でも生えているんじゃないかってくらい、軽い響きの言葉。耳から抜けて、飛んで行きそうな。

バシリ、と慌てて机に戻されたノートは、弱ったように横たわる。


「朝海くぅーん、そんな怒んなってぇ」
「…怒ってねーよ」
「ってうわ!?今日しょっぱなから安達の授業かよ!?」
「…お前忙しいな」


うわーサイアクー、そう言って、目の前でがくりと落ちた高嶋のアタマ。揺れる、明るく染められた髪。

それは毛先に向かってたどるほど色が抜け落ちていて、キィ、と。軋んだ音を連想させる。