学校の内部、外部の人間かはわかりませんが──
三日前の放送が、ぬるく茹だった頭の中をよぎる。
古いスピーカーからブチブチ、ちぎれながら流れた音。
必ず、施錠するよう徹底してください──
歩きながら、自転車のカギをつかもうと、ポケットを探る。
あれ、と、立ち止まった。指先に触れるはずの金属の感触が、どこにもなかった。
「…やべ」
思わず、口に出た。
落とした、以前に、外した記憶がなかったからだ。つけっぱなしだ。
あの放送の日からは、気をつけていたつもりだったのに。少し慌てて自転車置き場へ向かう。
たった一度カギをかけ忘れたからってすぐ盗まれている、なんて思わないけれど。
それでも、カギがついていない自転車の群れの中で、一つポツンとカギがぶらさがっている自転車があれば、きっと目立つだろう。
急いでたどり着いた自転車置き場には、誰もいなかった。
下校時刻は過ぎているのに、ガランとしているその光景に、まるで自分が授業を抜け出したかのような感覚に陥りそうだった。
自転車は、あった。
何の変わりもなく、いつもの場所に。カギは刺さったままだった。