よく知っているのにどこかよそよそしい自分の部屋に。

ダメだと言うくせに、俺の首に巻き付く腕に、そういう、矛盾した、チグハグなところに。


「…ふっ…ん」


腕の、細い部分から太い部分に上っていく俺の指に、鼻にかかった声が漏れる。

首元に顔をうずめる。手首よりも、熱い体温。

渇いた唇がソレを吸収して、心臓に落ちる。何かがねじれていく。

頭と体が、分離していく。


…この部屋の、すぐ隣で。壁を隔てた隣で、星治は、白い肌に触れたことがあるのだろうか。


ふいによぎった思いが、頭を冷やす。

後悔に似た冷たい気持ちが充満してしまいそうになって、俺は夢中で小麦色の肌に鼻先をうずめた。

熱くなる。火をつける。

くすぶるように燃える。赤い炎じゃない、黒く濁った煙。二人分の重みに沈む、ベッド。シーツ。白くない肌。よそよそしいままの、自分の部屋。

あっ、と目下の唇から大きな声が漏れた瞬間、彼女は自分の口を手のひらで塞いだ。


「…声、出して」


唇にあてがわれた蓋を、強引にはがす。


「でも…っ」
「出せって」