思い出がたくさん蘇りそうになって、俺は、蓋をするみたいに息を呑んだ。
「なぁ、朝海」
忘れてきてしまったのかもしれない。自然な笑い方は、あの夜の晩に。
ゆがんだ笑みが浮かんだままの口元が、俺に問いかける。
「…今度の合コン、朝海も来ねぇ?」
その問いかけに、多分俺は頷いたんだと思う。
ああ、とか、おお、とか、何かしらそんな言葉をセットにして。
数日後に開かれたその集まりで、俺には人生初めての彼女ができた。
中学の頃にもそういうことはあったけど、マトモに彼女と呼べるのは、この時が多分、初めてだった。
その、数日後の合コンでできた彼女は、またその数日後に、俺の家に来た。
ジュース、オレンジとリンゴ、どっちがいい?とか聞いて、グラスを二つ並べて、ちょっと話した。
彼女は違う高校だったから、見知らぬ制服だったし、白シャツをくわえたチェックのスカートは、自分の学校の紺色よりも、短かった。
座る時、俺とは違って、彼女はスカートのひだを気にしながら腰かけた。
高い声は、耳になかなか馴染まなかった。
グラスの中のジュースは、すぐにぬるくなって不味くなった。