「うあーっ!いいよなぁ!!部活終わりにチャリ二ケツとかなにその青春っぽいの!!」
「その前にお前、帰宅部だろがっ」
「帰宅部にだって夢を見る権利はあるっ!!…って、足踏むなって!痛っ」


騒がしさに埋もれて、突っ立って。目を細めて、遠くを見やる。

軽く瞼を閉じたような、薄闇の中。

もう何も、見えなかった。黒い点でさえも。二人を乗せた自転車は、もう映らない。

気持ちよかったはずの新鮮な空気が、体の中でグラグラ、煮えたみたいになって。

目眩に似た感じを覚える。背中が粟立つ。まだ、こんなにも衝撃を受けてしまう自分に、嫌気がさした。


「…あーあ」


俺の横に並んだ唇が、ふてくされた声で呟く。


「アイツらさぁ、学校であんま話さないから、ほんとに付き合ってんのかよって思ってたけど。やっぱ、まだ付き合ってんだなー…」


どこか悔しそうな、羨ましそうな感情が、尖った口から漏れる。

確かに、星治と宝田は、学校では一緒にいたり、話したりしなかった。廊下ですれ違ったって、露骨に目を合わせたりもしない。

いっそのこと、あからさまにしてくれれば、清清しい気持ちでいられたかもしれなかったと思うほど。