じっと考え込む様子もなく、朱理は即答する。

「母です」

「そういえば、現世であなたは随分お母様にお世話になっていたようでしたからね」

「はい」

寂しげな目で、墓石を見つめる朱理。

「母がいなければ、私は生きていけないと思います。二十一歳になって情けない話ですが」

「いいえ。そして、そのお母様が自殺未遂の原因となったんですよね?」

「その通りです」

ゆっくりと、朱理は記憶の糸を手繰り寄せていった。