ソレデモ・・・・



「沙希、何その荷物? 笑」






「えっ?」






「いつからそんなに大胆になったの?」







勢いだけの自分の行動に少し恥ずかしくなる






「はい。貸して。」





アタシからキャリーバックを奪いとった高井さんは満足そうに歩きだす









「アタシ話したい事いっぱいある」







「聞くよ」








「長くなるよ」







「時間はいっぱいあるから」






「そうだ。X'masは拓と葵ちゃんと、結衣ちゃんとついでに楓も来るらしいよ」





「ほんとに??」







「みんな沙希に会いたいって」






「アタシも!」







タクシーに乗るとホテルまで5分ほどでついた







「はいどぅぞ」







「はぃ」


「適当に座ってて」




「うん」





「もうすぐ夕方かぁ。ご飯どうする?」





「なんでも。。。」







「じゃあ俺に任せて。
本場のパスタ食べるチャンス(笑)

沙希はペペロンチーノな」






アタシが好きなのはカルボナ-ラなんだけどなぁ。




少しずつそういうとこからアタシを知って欲しい





アタシも高井さんのこともっともっと知りたい





「じゃあちょっと休んだらいくかっ!」






「はぃ!



高井さん。イタリアも詳しいんですか?」





「何回か仕事できたから。。


ここからだと少し遠いからフロントに車呼んでもらおうな」







アタシには全く何を言ってるのか分からない言葉で簡単に手配をしてしまう





やっぱり高井さんは何やってもかっこいい


カプール広場を過ぎて少しするとタクシーが止まる





【グロッタ・アッズラ】




中に入るとまるで洞窟みたいな雰囲気






アタシが呆然としてると、シェフが出てくる








「久しぶりだね。高井くん」







「そうですね」








「今日は彼女と?」






「はい」








日本の方が経営されてると聞いた。









壁には有名サッカー選手のサインがある










「すごいね」








「じゃあ座ろう」








ちゃんと予約がされていたようですぐに料理が運ばれてくる










「コースだけど嫌いなものがあったらいえよ」







「はい」






こういう大人の対応にドキドキする








アタシを見守ってくれてるっていぅ安心感に今までなかった安らぎを感じる








【ペンネのカルボナーラ風】






「あっカルボナーラ!!」








「好き?」







「すごく好き!一番好き」









興奮気味のアタシに嬉しそうに微笑んでくれる


【手長海老のグリル】







「おいし〜!!」





「よかったよかった。
ほんとおいしそうに食べるなぁ」







「だってほんとおいしい!」









この後ピザやデザートのティラミスまでアタシの好きなものばかりだった








もし苦手なものが出てきても絶対全部食べようって思ってた。



そんな心配は無用だった。




シェフにお礼を言って店を出る




「高井さん、ほんとありがとうございます」







「あそこの店のオーナーは一度きたときから親切にしてくれるんだ」






「そうなんだ」









誰にでも愛される高井さんをとても愛おしく思う








異性に人気がある人はたくさんいると思うんだ







でも同姓にも好かれるという事はその人の性格だったり本当に素の部分が素敵なんだと思うから
もうすぐX'mas





みんなに会えるんだぁ





「沙希ついたよ」





「あっ、はぃ」





まだ、突然の返答には敬語がでるなぁ




そろそろ直さないとまた高井さんにからかわれるんだろうな。






部屋に入りソファに座る




アタシの斜め前には高井さん



この2人の距離感はどちらからともなくこうなる




「高井さん、今日ついたの?」





「そうだよ。まだ時差ボケ(笑)」






「疲れてるのにいきなり来ちゃってゴメンナサイ」






「いいよ」


高井さんはいつも『いいよ』って言ってくれる


それがたまに不安になるときもあるんだけど。


「なんか飲む?」





「じゃあアタシが!」





「使い方分かるの?」




「。。。」




「はぃ、座ってて」

また頭をポンポンっ叩く




これ。。。


アタシが嬉しいの分かっててやってるのかな?






道を歩く時は自然に高井さんが道路側にまわってくれる






寒いときは何も言わなくても服を掛けてくれる





高井さんが聞きたい事があってもアタシが口を開くまで黙って待っててくれる





高井さんはいつもそうなの?





誰に対してもそうなの?





紅茶を入れてくれる高井さんを見ながらそんな事ばかり考えてた






「はぃ。どうぞ」




その笑顔も。。。







高井さんの素敵な部分を見つける度に不安になる





アタシでいいのかな。。。


「結婚しよ」




俺の精一杯プロポーズちゃんと届いてんのかよ







沙希の反応はいまいち分かりずらいんだよな





あいつ本当に俺の事好きなの?




俺の気持ちちゃんと伝わってんのかよ。。




未だにそっけない敬語





いつもの微妙な間隔





目を合わせようとしてもすぐそらす




今まで人をこんな風に思ったことないんだよ




拓に沙希がイタリアに行ったって聞いたときの寂しさは母親がでていった時の寂しさに似てた。





拓も俺も片親で育ったからきっと沙希の強さみたいなものに惹かれたんだろうな。




沙希は覚えてる?



まだ高校生の頃、沙希は拓とよく一緒にいたよな。




沙希と拓は1年


俺は3年




いつもじゃれ合ってる2人を見てた




1度だけ話した事あるんだよ。




そう。。






片思いしてたのは俺の方なんだ。。。






俺はその思いを伝えることなく卒業して劇団に入った





拓からはよく沙希の話を聞いてた





拓もずっと沙希が好きだった



聞かなくても分かる






兄弟で沙希に恋をして、その思いは伝えられないままで。。






10年後俺は沙希にまた出会った





そしてまた恋をした




拓に沙希が俺のファンって聞いたとき正直嬉しかったし戸惑った





きっとそれは俳優 高井祐介が好きって言うことだから。




それでももう一度会いたいと思った





沙希の部屋で鍋した時も何を話したらいいのか分からなくて舞い上がってたのは俺のほうだよ。





人に思いを伝える仕事をしてるのに好きな女に何も言えないなんてな







メルアドを渡したときの俺の心臓の音聞こえなかった?



渡すだけで精一杯で拓と葵ちゃんの方へ走っていく姿を見るのが切なかった






「好き」



って言葉を言うのにどれだけの時間かけてんだよな