しばらくすると、カリレム様が小屋から出てきて言った。
「ミハリス?」
「…カリレム様!?」
「かしこまった言い方はもう、いいよ。」
「貴方の威厳が無くなりますよ。」
「じゃあ、せめて『様』は配慮して。」
「では…、カリレムさん…。用件は何ですか?」
私はカリレムさんの目をじっと見る。
カリレムさんは一呼吸おいた後、呟いた。
「ミハリスは俺のこと…どう思ってる? 俺の護衛として生きていくことになって、本当に良かったのか?」
なんでこの人はこんなことを考えているの?
私がカリレムさんの護衛として生きていくことになったことを後悔したことは一度も…
「本当は、リリアス王女のことが好きだったんじゃないの?」
そうだった。産まれた時から姉妹のように可愛がられていた。
だけど、私と同い年の弟がいたということは全く知らなかった。
しかも、私は結局は召使のまま。リリアス王女に親しげな言葉を使うことはもう……無い。
なんで涙がでてしまうの? 私は後悔なんて全くしてないのに。
カリレムさんの護衛になれて嬉しかったのに…。
―――「本当に…?」
私はリリアス様の王宮へと走りだす。今戻ったら何と言われるだろう。
でも…リリアス様の温もりが欲しい。
あーもう。何で今更そんなこと…。
生まれて初めてカリレムさんの護衛になったことを後悔した。