翌日、荷物をまとめて豪邸を出ると、突然、カリレム様が消えた。
周りを見渡すと、草原の端に小さい穴があいていた。
人が一人だけ通れる位の小さな小さな穴だった。
カリレム様が手招きをして私を呼んだ。ここから逃げるのか。
「この穴は何処へ繋がっているのですか?」
「山奥の、神聖なる森“ルートリヴ”の俺の隠れ家。」
「そうですか、そこならひとまず安心ですね。」
「…あぁ。」
私は久しぶりに笑った。
何故か、この人を守れることが誇らしくなった。
しかし、その誇りも束の間、私は恐怖に襲われた。
その理由は、カリレム様の隠れ家に入った時、その中には、女が二人、カリレム様の帰りを待っていたのだから―――――。
私はその場に立ち尽くした。