誰かに連れ去られた夢を見た。
もうとっくに日は落ちて、あたりは暗くなっている。
「よし、もう大丈夫だ。ここで少し休もう。」
目が覚めたのは、人気のない洞窟の中だった。
「…カリレム様、ありがとうございます。」
「いや、こちらこそ…ありがとう。」
まだ体は震えていたが、何故か心は落ち着いていた。
「私の命はカリレム様に預けます。ですが、リリアス様を殺すことだけはしないでください。」
「…ミハリスは、リリアス王女の悲しそうな顔を見た?」
「はい…。」
カリレム様の家に入ってきたリリアス様は、入ってきた時、一瞬だけ信じられないような目でこちらを見てきた。
私の心はあれから罪悪感でいっぱい。
何処か一点だけを見つめているカリレム様の横顔を見て思った。
…そうだ。
やっぱり姉弟が殺しあうことはあってはならない。
私がこの国を平和へと導くしかないんだ。