昼休みのチャイムが鳴った。頭の中の整理がつかず、これまでの時間の記憶が全くない。
一応静かにしていた教室は開放され、いろいろな場所に塊ができ昼食を食べる体制が作られていった。
俺はと言うと、朝慌しく家を出てきたために、母ちゃんが作ってくれた弁当を置
いてきてしまった
・・・・この暑さじゃ・・帰った頃には腐っているな・・・。
また母ちゃんにどやされる・・・。
我ながら自分がいやになる、余計な悩みが1つ増えてしまった。
・・・・だが・・・・若さってすごい。
どんなに悩んだって腹が減る。
俺は昼食の調達に売店へ向かった。
教室を出ると、隣のクラスに目を向けた。
踏みつけられ,昼食の調達を命じられていたあいつは、もうとっくに売店に向かっているだろうと思い覗いてみた。
予想ははずれ、あいつは教室の後ろで足止めを食らっていた。
まるでキャッチボールでもしているかのように、
あいつは4人に囲まれ、もて遊ばれていた。
奴らにとって、昼食なんてどうでもいいことなのだろう。
あいつをいじめる口実を作りたいだけだ。
嫌なものを見て足取りが重いまま俺はその場を離れた。
昇降口の前に売店は開かれていた。
ここの人気は焼きそばパンとコロッケパンで、
他のパンより多く用意されているにも関わらず、すぐに売り切れる。
昼休みに入ったばかりだというのに、もう数人の列が作られていた。
弁当派の俺はあまり買いに来る事はないが、桜井の付き合いで時々顔を出していた。
売店はおばちゃん一人が切り盛りしていた。
松子デラックスを何分の1かに縮小した感じのおばちゃんは、おもしろい事に名前がニヤミスで「まちこ」という。
アシックスの上履きを履いている事から俺らの間では
「まちこアシックス」
という、とってつけたようなあだ名で親しまれていた。
今日もおばちゃんは一人ひとりに声を掛けながら、
ゼンマイ仕掛けのおもちゃのように規則正しい動きで客をさばいていた。
列はゆっくりと進み、俺の番が回ってきた。
「おばちゃん焼きそばパンとコロッケパンちょうだい」
たまにしか買わない俺はとりあえず売れ筋を注文した。
「あら?珍しい。啓ちゃん今日は弁当じゃないの?」
おばちゃんは頼まれた物を紙袋に入れながら話かけてきた。
「忘れた」
「あら~そりゃ美代ちゃんにどやされるわ~」
おばちゃんは横目で冷やかすように言った。
母ちゃんを美代ちゃんと呼ぶこの人は、
母ちゃんとは幼馴染であり、俺の事もちっちゃい時から知っていた。
父ちゃんと母ちゃんが別れた時は、しょっちゅう家に顔を出してくれた。
「女なんて一人でだって生きていけるから大丈夫よ!」と、気を落としている母ちゃんの背中をバシンと叩いて気合を入れていた。
ガハハハと笑う豪快さに、幼いながら頼もしさを感じたものだった。
「啓ちゃん、美代ちゃんに苦労掛けちゃだめよ」
陽気で、細かい事は気にしない人のように見えるおばちゃんだが、おばちゃん自身も離婚歴があり、女手一つで子どもを育てる大変さは身をもって知っていた。
だからその言葉は口癖のようなもので、俺に会うと必ず言う言葉。
聞きなれた言葉のはずだが、今の俺には”苦労を掛けちゃだめよ”の言葉が胸に刺さった。
「ウィーッス」
俺は受け取った紙袋を振り、後ろ向きに手を振り売店を去ろうとした。
そこにあいつは飛び込んできた。
一応静かにしていた教室は開放され、いろいろな場所に塊ができ昼食を食べる体制が作られていった。
俺はと言うと、朝慌しく家を出てきたために、母ちゃんが作ってくれた弁当を置
いてきてしまった
・・・・この暑さじゃ・・帰った頃には腐っているな・・・。
また母ちゃんにどやされる・・・。
我ながら自分がいやになる、余計な悩みが1つ増えてしまった。
・・・・だが・・・・若さってすごい。
どんなに悩んだって腹が減る。
俺は昼食の調達に売店へ向かった。
教室を出ると、隣のクラスに目を向けた。
踏みつけられ,昼食の調達を命じられていたあいつは、もうとっくに売店に向かっているだろうと思い覗いてみた。
予想ははずれ、あいつは教室の後ろで足止めを食らっていた。
まるでキャッチボールでもしているかのように、
あいつは4人に囲まれ、もて遊ばれていた。
奴らにとって、昼食なんてどうでもいいことなのだろう。
あいつをいじめる口実を作りたいだけだ。
嫌なものを見て足取りが重いまま俺はその場を離れた。
昇降口の前に売店は開かれていた。
ここの人気は焼きそばパンとコロッケパンで、
他のパンより多く用意されているにも関わらず、すぐに売り切れる。
昼休みに入ったばかりだというのに、もう数人の列が作られていた。
弁当派の俺はあまり買いに来る事はないが、桜井の付き合いで時々顔を出していた。
売店はおばちゃん一人が切り盛りしていた。
松子デラックスを何分の1かに縮小した感じのおばちゃんは、おもしろい事に名前がニヤミスで「まちこ」という。
アシックスの上履きを履いている事から俺らの間では
「まちこアシックス」
という、とってつけたようなあだ名で親しまれていた。
今日もおばちゃんは一人ひとりに声を掛けながら、
ゼンマイ仕掛けのおもちゃのように規則正しい動きで客をさばいていた。
列はゆっくりと進み、俺の番が回ってきた。
「おばちゃん焼きそばパンとコロッケパンちょうだい」
たまにしか買わない俺はとりあえず売れ筋を注文した。
「あら?珍しい。啓ちゃん今日は弁当じゃないの?」
おばちゃんは頼まれた物を紙袋に入れながら話かけてきた。
「忘れた」
「あら~そりゃ美代ちゃんにどやされるわ~」
おばちゃんは横目で冷やかすように言った。
母ちゃんを美代ちゃんと呼ぶこの人は、
母ちゃんとは幼馴染であり、俺の事もちっちゃい時から知っていた。
父ちゃんと母ちゃんが別れた時は、しょっちゅう家に顔を出してくれた。
「女なんて一人でだって生きていけるから大丈夫よ!」と、気を落としている母ちゃんの背中をバシンと叩いて気合を入れていた。
ガハハハと笑う豪快さに、幼いながら頼もしさを感じたものだった。
「啓ちゃん、美代ちゃんに苦労掛けちゃだめよ」
陽気で、細かい事は気にしない人のように見えるおばちゃんだが、おばちゃん自身も離婚歴があり、女手一つで子どもを育てる大変さは身をもって知っていた。
だからその言葉は口癖のようなもので、俺に会うと必ず言う言葉。
聞きなれた言葉のはずだが、今の俺には”苦労を掛けちゃだめよ”の言葉が胸に刺さった。
「ウィーッス」
俺は受け取った紙袋を振り、後ろ向きに手を振り売店を去ろうとした。
そこにあいつは飛び込んできた。