無視して通り過ぎる事ができるだろうか・・・・。


あいつに近づくほど俺の心拍数は上がっていった。


え~~~い!!知らん!!お前なんて知らん!!

知らん!知らん!知らん!!!!!


そう心で叫びながら、俺はあいつの前を通り過ぎようとした。


「何シカトしてんだよ」


首根っこを摘ままれた子猫のように、ヒ~ッ!と肩をすくめて俺はあいつの前で立ち止まった。


恐る恐るあいつの方に顔を向けると、左の口角を上げあいつがニヤッと笑っていた。


「あんた・・・・神田 レオっていう名前なんだ?」


苦し紛れの会話を俺は吐き出した。


「えっ?!違うよ。本名はガブリエル。これはこっちの世界の名前。

ひらがなにすると「かみだ れお・・・・れお・・・俺・・・みたいな」

と言ってより一層悪賢い笑みを浮かべた。


ふざけてるこいつ・・・・


「なんで・・・・なんであんたがこっちの世界にいるんだよ」


俺は、ちょっとふて腐れたように口を尖らせて言った。


「話せば長いんだよね~。


早い話が、親父に言われたのよ『事件は審査室で起こっているんじゃない!


現場で起きているんだ!』って。」


面倒くさそうに言うと、あいつはまた襟足を弄繰り回した。


って言うか・・・・それ映画かなんかの台詞だよな


そっちでも見れんのか?!


「頭いいだけじゃやっていけないのよ、神様っていうのも。


経験積んで来い!っておん出されたわけよ。」


あの世もこの世も同じなんだ・・・・普通に感心してしまった。


「ってことでよろしく!あっ俺のことガブって呼んでもいいから。」


と言ってニッと笑った。


「何々?お前ら知り合いだったの?」


完全にあいつのペースにのまれそうになっていると、この時ばかりは空気を読めないのが功を奏し、


桜井が居たたまれない空気に割り込んできた。


「実は幼馴染なんだよ。」


あいつは俺の肩をガシッと組み桜井に言った。


「え?!マジ?」


と乗ってきた桜井は、一気にあいつとの距離を縮め2人で勝手に盛り上がり始めた。


俺だけどっと疲れ切って教室へ入ろうとした。


その時、隣の教室から何かがゴロゴロと転がり出てきた。


「後で昼飯4人分買ってこいよ」


転がってきた何かをグリグリと踏みつけ、見るからにチャライ加藤という奴がニヤニヤしながら言った。


「はい!!!わかりました!!」


怯えきった声で踏みつけられたそいつは言った。