相馬さんにもいいところはあった。しっかりものだった。
なんだかんだいって、事務員をわきまえていた。
お茶を出すタイミングや気の使い方も勉強になる。
電話対応でも言い回しがきれいだった。
何か頼まれると気を利かせてそれ以上の事をやる。
こうしておけば見る時に見やすいとかこれを優先的にやった方が良いとか
いろいろ教えてもらった。
きびしいながらも勉強になる事も沢山あったし、尊敬はしていた。
相馬さんはなにかにつけて「私、定年までやめませんから」と言い続けていた。
本当にそうだろうとみんな心の中で思っていただろう。
結婚もしなさそうだし、ずっと居座るだろうと内心思っていたのだろう。
相馬さんはいろんなところに敵を作るタイプだからあまり好かれてはいなかった。
私はそんな相馬さんを見ていたから、平和に大人しくしていようと
心に決め日々過ごしていた。
そんなわけで、私は家でも職場でも癒される事は一切無かった。
相馬さんはある意味面白い人だけれど人の話は基本的に聞かないので
私から何か話をするのは仕事の用がある時だけだった。
仕事を一緒にする上では女同士の付き合いがあるよりは
さっぱりとしている方がよかった。
私は家族でさえも色々と詮索されるのが苦手だった。
相馬さんと一緒にいると楽は楽なのだが、一緒にいるにはあまりにも
ストレスを感じる人だった。