でも違った。この人は末恐ろしい人だった。
平気で上司本人の目の前で悪口を言う。
私は最初それを見たとき、胃が痛くなるほどヒヤヒヤした。
しかし、時間が経つにつれそれが普通の光景となった。
やりたくないことはできませんとつっぱねた。
何を言われてもやらないというような恐い顔をしているので
それ以上誰も何もいえない空気だった。
相馬さんは他の部署の人とも口論が耐えなかった。
事務は何でも屋だと思い違いをしている看護師やケアマネジャーが、上司に雑務を押し付け、それが私たちに回ってきた時はいつもそうだ。
まず、上司を一喝し看護師やケアマネジャー本人に直接文句を言いに行く。
「本当は上司に行ってもらうのが筋だけど、どうせ言えないだろうし」
といつもいっていた。
ナースステーションでおしゃべりをしている人達を見ると「暇人は良いよね」と言うし、裏庭で煙草を吸っている上司を見かけては「給料私よりもらっているくせにさぼりやがって」という。私は、恐ろしかった。
この人は敵に回したら私は事務所での居場所を奪われて
毎日が地獄になるとおもった。
だからこそ、自分のやるべき事はしっかりやらなくてはと気が張っていた。
仕事を始めてから一年はずっと「渡辺さんはまだ知らないだろうけど」と
話し始めにはいつも言われていた。
私は、悔しくて自然とこの人に認められねばと思っていたのかもしれない。