「・・・それはいいよ。うん。うまくいくといいね。」
詩織は笑顔だった。
私は人の気も知らず、佐田に告白の返事をした。
それから、一ヶ月もしないうちに別れた。
私は結局佐田のことを好きにはなれなかった。
別れたことを詩織に告げると詩織はちょっと黙った。
そして、笑顔で言った。
「・・・そっか。よし、じゃあ飲みにいきますか。」
詩織は私のことを恨んではいなかった。
それから私と詩織は、佐田の悪口をネタのように言い合うようになった。
佐田は私のことを避けるようになった。
私と詩織の二人でいるときは姿を見かけても声をかけなくなった。
しかし、詩織が一人でいるときは話しているらしかった。
佐田は詩織の気持ちにうすうす気づいていたんじゃないだろうかと私は思う。
佐田は大学のテストの時期になると詩織にノートを貸すように頼んでいた。
私は、詩織はいいように使われていると思っていたがそれは詩織には言えなかった。
大学を卒業してからも、私は一切連絡を取らなかったが、
佐田は時々詩織に連絡を取っていた。
あるとき、詩織がぽつりといった。
「佐田くんね、彼女にふられたんだって。」
私は都合のいいときだけ詩織に連絡をする佐田に腹が立った。