朝、いつもは目覚めが悪い事などないのに、その日はすごい寝汗だった。

今から八年前の出来事を夢で見たからだ。

現代の神秘と呼ばれ、今はモニュメントとして観光スポットになっている東京湾の岸壁。
その名前は、東京ウォール。

あの首都大震災の後、地形学の専門家は大震災の影響があんな壁を作りだしたと仮説を唱え、それが今では世間の常識だ。

だけど、あの時のことを知っている自分からすればそれはまるででたらめだ。

そう、俺は、俺、神道咲夜はその真実をこの眼に焼き付けたのだ。
あの時、まだ9歳だった俺は出会った。

言葉使いという老人と。

老人とはそれきりで、今の今まで会うことはなかったのだが、何故今日になってこんなに鮮明にあの日の事が蘇ったのだろう。

頭が異常に痛いのもあの夢のせいなのだろうか。

とにかく学校に行くために着替えを始める。
遅刻などしようものなら担任の松山にどやされるだけではすまない。

着替えてトーストをかじりながら、居間のテレビをリモコンでつけると丁度、首都大震災の特集をやっていた。