第一、
「いきなり台本渡してきて13ページを5分で覚えろとか言う先輩の気が知れません。僕より約一年ほど生まれが早いからって、さすがにこの扱いはないのでは?
沙織お姉様」
常に無表情な顔を崩し、ニッコリとした笑みを浮かべると、先輩――いや、沙織姉さんの顔が強張った。
「両親の離婚によって3年前に離れ離れになり、運良く姉さんの通う高校に入学した僕に対して、姉さんが言った言葉を覚えていますか?
『は じ め ま し て 、私は瀬野 沙織。貴方は演劇に興味ある? もしよければ見学に来てみない? 君みたいに格好良い人はいつでも大歓迎よ』
ですよ。あの時の僕の気持ちがわかりますか?」
わざと『はじめまして』の部分を強調させると、姉さんの顔が青く染まる。