緑が鮮やかな公園で、俺から離れて君は歩く。
そんな君を見ていた俺。

『君を連れ去りたい』
俺の胸は締め付けられた。
その衝動に俺は、君の手を掴んで走り出した。

君は驚いて戸惑っていた。





まだ一度も、君を乗せてなかった俺のバイクのタンデムシート。

ずっと前から君を乗せたくて、用意しておいた君専用のヘルメット。

『ここに君を乗せたかったんだよ』

その気持ちを込めて、君にヘルメットを被せて、ヘルメットをポンと叩いた。

俺はバイクに股がると、セルを回す。

突っ立ったままの君に
「乗って」
と声をかけて前を向く。

戸惑いながらタンデムシートに乗る君に
「しっかり掴まれよ。」
と振り向いて声をかける。

ぎこちない君が可愛い。


俺は再び前を向くと、軽くエンジンを噴かしてから、バイクを発進させた。


君はしがみついてこない。
想像通りだ。

そんなことを考えていると、君が突然

「わあああーーーっ！」
と叫んだ。

しかも、両手を上げて！

危ないから驚いたけど、いかにも君らしくて笑えた。

俺は振り向いて
「危ないだろ」
と言ったけど、君に聞こえなかったみたいで、君が聞き返す。

聞き返す君の顔が近くて……
ニケツしてるんだから当たり前だけど、年甲斐もなく俺は照れた。

だから俺の口から出た言葉は
「ばーか」
になった。

俺はシートを掴む君の左手を取って、俺の腹に回して
『俺にしっかり掴まれよ』
そう思いながら、君の手を腹に押さえつけて、強く握った。

振り向くと、やっぱり君は戸惑っていて、その表情に俺はたまらなくなった。

俺は君に笑いかけてから前を向き
『何も気にすんなよ。安心しろ。』
そんな気持ちを込めて、君と同じように叫んだ。

俺の気持ちが伝わったのかな……
わかんないけど……君が俺にしがみついた。

その瞬間の俺の感情は、本当にガキみたいで……
嬉しくて……嬉しくてたまらなくて、言葉にならない声を上げて叫んだ。

すると君がまた、さっきよりも大きな声で叫んで……

君と俺は目を合わせて、声をあげて笑った。

一呼吸の後、君と俺は言葉で示し合わせたわけじゃないのに、二人して片手を上げて叫んだ。

再び、声をあげて笑い合う君と俺。

君が俺に抱きついた。
さっきよりも力強い。

俺はバイクを加速させた。


陽が落ちてゆく空の下
どこまでも続くような
真っ直ぐな道を走る。

『この時が、どこまでも続けばいいのに……』

俺に抱きつく君の温もりを感じて、切なくなる。

君の手に力が入る。
君もきっと俺と同じ気持ちだね。

君を抱きしめたい気持ちを、ハンドルを握る手に込めて、しっかりと握り直す。
永遠があると信じながら……。


『君をこのまま連れ去りたい。もう君と離れたくないよ。』

君を乗せた俺のバイクは、時間の許す限り走り続ける。

俺のバイクのライトが暗いアスファルトの道を照らす。


俺は照らされた道の先を睨み付ける。









『終わらない道を一緒に探そう』