「もしも、まだすみれが泰河を好きなら、あたし…」


麻姫の瞳がキッと鋭くなる。

こんな感情むきだしの麻姫をあたしは知らない。

いつも明るくて穏やかで、あたしと正反対な彼女の見せた意志、それは…




「すみれと、親友やめてでも泰河を選ぶから。…泰河は絶対渡さない!」


制服のスカートをぎゅっと握りしめ、麻姫はそう言った。




あたしは、また嘘をつかなくちゃいけないのかな。そしたら、誰も失わずに済む?

でも、思い出すのは、

「忘れないから」

あの人の声。唇。指先。