今でも忘れられない。 「俺は、嫌いじゃなかったよ、お前のこと」 そう言った司馬の表情は、「無」だった。 「嫌い」という言葉がどれだけ人を傷つけるか、知っていたはずなのに。 あたしは、弱かった。 司馬のことを好きな女子たちから仲間はずれにされるのが嫌で、 「付き合ってるの?」とからかわれるのが恥ずかしくて、 自分を守るために大切な人を傷つけた。 あのときの彼の声と表情が今でも頭から離れない。